アメリカズカップは〈USA〉の2連勝であっけなく終わったが、西村一広さん(http://www.compass-course.com)の現地からのレポートはもう一回、このブログ宛に届くハズ。
そこで、それを待つ間、スペースの関係で割愛した西村さんの以前のレポートの一部をここでお伝えしたい。2月12日付けレポートの中に以下の興味あるエピソードが含まれていた。
2月12日 バレンシア
2月1日にハワイでのホクレアのトレーニング航海が終わり、お昼近くにホノルル空港の国際線ターミナルに入った2月2日、時間つぶしに何気なく本屋さんに入った。
創刊40周年になる米国のセーリング誌が出版した2010年版バイヤーズガイドがあれば買っておこうと思ったからだ。
運よくそのムックが置いてあるのを見つけたが、ついでに、その隣にあったその出版社の出している雑誌の2月号を手に取り、パラパラとめくった。
その中に、たった2ページ半の扱いだったが、今回のアメリカズカップについての解説記事があった。〈BOR90〉(=〈USA〉)と〈アリンギ5〉の比較表が載っている。 そこには、長さとか幅の比較があり、そして予想セーリング重量の比較があった。
〈BOR90〉25920ポンドに対して〈アリンギ5〉は33790ポンド。んー? 校正ミスではないのかい?
世間では、〈アリンギ5〉のほうが軽い、だから微・軽風は間違いなく〈アリンギ5〉が速いことが、半ば常識のように語られているのだ。それが、この比較表では、圧倒的に〈BOR90〉、つまりBMWオラクルレーシングの挑戦艇〈USA〉のほうが軽い、と書かれているのだ。
立ち読みしている場合ではない、と思い、すぐにレジに向かって購入し、どこか落ち着いて読めるところを探す。この本を手に取る前は、飛行機に乗る前にコナ・ブルワリーの美味しいビール、『ロング・ボード』をちょっと一杯、と思っていたのだが、飲み物はコーヒーにすることにして、じっくりと記事を精読する。
書いているのは、イアン・キャンベル。長くサウザンプトン大学のウォルフソン研究所にいて、アメリカズカップ艇の開発に携わった人で、前回のアメリカズカップではルナロッサに所属していた。このような記事を書くのに相応しい、信用できる人物だ。
イアン・キャンベルの記事は、面白かった。納得もできた。そして、ソワソワした気持ちになる。
ぼくが、『アメリカの挑戦艇〈USA〉は、防衛艇〈アリンギ5〉よりも重いはずだと専門家筋は予想している。同じ長さのヨットでは、微風下では軽いほうが速い。それはマルチハルでも同じ。しかし今回のレースは、セールエリアの制限はないので、艇の重さだけで2隻の性能予測はできない。横幅は圧倒的に〈USA〉のほうが広い。マルチハルのデザインでも、横幅はスタビリティーの大きな要素だ。』という原稿を書かせていただいたのは日本のセーリング専門誌『KAZI』である。
読者に、「〈USA〉は〈アリンギ5〉よりも重い」という先入観を持たせてしまう一文を入れてしまった。手遅れだ。うーん、いつもは美味しいハワイのコナ・コーヒーが不味い。
あの記事を読んだ方がいらっしゃいましたら、ここで、ごめんなさい。「〈USA〉は〈アリンギ5〉よりも軽い」、と断言している『専門家』もいました。
ついでにもう一つ、マーク回航の方向ですが、これも反時計回りと書いてしまいましたが、間違いです。
予告信号前にコミッティーボートから赤か緑の旗でポート回りかスターボ回りかを指示する、というのが本当です。すみません。