14歳の少年ジョン・スペンサーが主人公となって、新米セーラーとして経験を積みつながらさまざまな冒険に遭遇する成長物語です。第1作の日本での発行は2001年ですから新しい作品ではありませんが、図書館の児童書コーナーで偶然に見つけて、手に取りました。
第1作「The Wreckers 呪われた航海」でスペンサーは初めての航海に出ますが、いきなり難破の憂き目に遭います。冒頭から嵐のシーンで、あっという間に浜に打ち上げられ、かろうじて一命をとりとめたところから話は始まり、その後は波乱万丈。ミステリアスな展開で、ハラハラドキドキなシーンも満載。
第2作「The Smugglers 死をはこぶ航海」では密輸船事件に巻き込まれ、敵か味方かもわからぬクロー船長の下、ドーヴァー海峡を縦横に帆走します。馬車強盗が船に乗り込んできたり、目の見えない老婆が登場したり、と謎が謎を呼ぶ展開です。
第3作「The Buccaneers 闇にひそむ海賊」では舞台をカリブ海に移し、スケールは大きくなります。あの悪名高い伝説的な海賊ディヴィー・ジョーンズ(漫画ONE PICECEや映画パイレーツ・オブ・カリビアンにもこの名前は出てきます)のエピソードなども登場。前2作のキャラクターも登場し、仕かけられた伏線も効果的で、3部作のなかではもっとも面白く仕上がっています。
どの巻とも3時間ほどであっという間に読めてしまいますので、風待ちなどのときに読むのもいいかもしれません。
筆者のイアン・ローレンスはブリティッシュコロンビア州のガルフアイランズの孤島に暮らすカナダ人。9歳でセーリングを始め、今も木製のカッターに乗る現役セーラーということで、セーリングシーンは臨場感があります。発刊当時は「宝島」を書いたスティーブンスンの再来との評価を受け、第1作はエドガー・アラン・ポー賞に候補になったということです。(3作とも理論社・刊、イアン ローレンス・著、三辺律子・訳。)
なお、以前、このブログで紹 介したヨットが登場する小説「風の靴」(講談社刊・朽木祥著)が産経児童出版文化賞の大賞に選ばれました。
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/100505/bks1005050933000-n1.htm